不動産の退去時の原状回復については、法律やガイドラインによってルールが決まっています。特に、賃貸住宅の場合、貸主と借主の間でトラブルになりやすいため、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が重要な指針となります。
1. 原状回復の基本ルール
原状回復とは、「入居者が故意・過失・通常の使用を超える損耗を発生させた場合、その部分を元の状態に戻すこと」を指します。
原則
- 経年劣化・通常損耗は貸主(大家)の負担
例:壁紙の日焼け、家具を置いていた跡、床の軽微な傷 - 借主の故意・過失による損耗・汚損は借主の負担
例:タバコのヤニ・臭い、ペットによる損傷、水漏れ放置によるカビ
2. 具体的なケース別負担の例
状況 | 負担者 | 備考 |
---|---|---|
壁紙の変色(経年劣化) | 大家 | 日焼けや自然な変色 |
たばこのヤニや臭い | 借主 | クリーニング費用 |
家具の設置跡 | 大家 | 通常の使用範囲 |
フローリングの小傷 | 大家 | 通常の生活で発生するもの |
フローリングに大きな傷 | 借主 | 物を落とした、引きずった傷 |
エアコンの内部清掃 | 大家 | 設備のメンテナンス |
エアコンにカビ・異臭(放置) | 借主 | 掃除不足による異常 |
鍵の交換 | 借主 or 大家 | 防犯目的なら大家、紛失なら借主 |
ペットによる傷・臭い | 借主 | 事前の契約内容にもよる |
3. 国土交通省の「原状回復ガイドライン」
- 敷金の精算はガイドラインに沿って行われるべき
- 経年劣化を考慮し、借主負担を過度に求めない
- 契約時の特約(例:退去時クリーニング費用負担)が有効かどうかは、合理的な範囲で判断
特に、借主の負担割合を決める際に「耐用年数の考え方」が重要になります。例えば、壁紙の耐用年数は6年とされ、6年経過後の補修費用は大幅に減額されるべきとされています。
4. 退去時のトラブルを防ぐために
- 入居時に写真を撮影し、状態を記録する
- 契約書の「特約」をよく確認する(特にクリーニング費用や鍵交換)
- 修繕費用の明細をしっかり確認する
- 不当な請求があれば、ガイドラインを根拠に交渉する
- 敷金返還トラブルがある場合は消費者センターや弁護士に相談
結論:
- 「原状回復=入居時の状態に完全に戻すこと」ではなく、経年劣化や通常の使用による損耗は貸主負担。
- 退去時に不当に高額な請求があった場合は、国土交通省のガイドラインを参照し、交渉可能。
もし具体的な事例があれば、それに即した対応策をアドバイスできます。